パラノイアボーズ

ダンス!ブルジョワ



パラノイアボーズの1stミュージックビデオ「ダンス!ブルジョワ」。PV製作第一弾に選ばれた曲は、それまで作られていたパラノイアボーズの楽曲群とは打って変わった音楽性を持った曲だった。
 「ダンス!ブルジョワ」のPVを撮影することが決まると、まずメンバ−は楽曲と歌詞の内容に合わせてPVのあらすじや内容を話し合っていた。しかしバンドメンバーが最初に感じたことは、技術的に自分たちだけでPVらしきものを作ることができるのだろうかという不安だった。そこでまずは「試し撮り」をやってみようということになり、練習スタジオを予約してノープランで撮影に挑むこととなった。
 不確定要素は多すぎるほどあった。予約しておいた時間は2時間。にも関わらず、とりっこ宅から持ち込む機材の多さ・重さにいつも通り時間をおしての入室。そこから機材の配置や接続、音だしを始めてようやく準備が整ったころにはすでに1時間が経過していた。
 とりっこが持って行く機材の整理や配線に従事しているころ、他のメンバーはそれぞれに機転を利かせて映像を彩る小道具を持ち寄った。ボゾは近所のドンキから小型ミラーボールを買ってきたし、戦士はもちろん戦士の衣装、エクスカリバー、サイリウム・サイリウムホルダー、ジョワ(ブルジョワにかけたもの)など準備に余念はなかった。デルは「下層社会を演出しよう」とコンビニからパンをたくさん買ってきたし、露天商はいつもの通りスタジオの床にハロプロメンバーの生写真・ポスターを広げ始めた。
 たった8畳のスペースでこれだけの人間がおおわらわになって、ようやく撮影の準備は整った。制限時間は、片付けの時間を考慮するともう1時間もなかった。「ダンス!ブルジョワ」の演奏時間は3分半。とにかく時間内にまわせるだけまわそうということになり、撮影は始まった。冒頭で現れる、さかきばらがミキサーをいじる手元のアップだけの映像を撮る。戦士がサイリウムをスティックにドラムを叩き、エクスカリバーを抜くシーンを撮る。デルが露天商の商品を値切るシーン(ハロプロのコンサート会場前では頻出の風景)を撮る。とりっこがギターを弾いてマイクに向かって暴れる様を撮る。天井から吊るされたモニターの上にカメラをのせて全員で踊っているところを撮る。
 制限時間いっぱいに、ただ音を慣らしてカメラをまわし続けるしかなかった。細かい演出などできるわけがない。どんな映像が撮れているのかもわからない。あとは、カメラの持ち主であるボゾの編集を待つしかなかった。
 数日後、ボゾからPV完成の知らせを受けた。すでにYouTubeにアップしてあるといわれ、僕たちもまた他のリスナーと同じようにYouTubeにアップされたPVを初めて見た。僕たち自身もまた衝撃を受けた。
 それから、いろんな方にこの映像を見ていただくことができた。僕らのバンドの名刺代わりにもなったし、知らない人から感想を言ってもらえることもあった。PV作成一発目、試し撮りのつもりでまわした映像が持っていた爆発力は僕らの想像を超えていて、もはや「正式版」を作るという気持ちは薄らいでいた。
 公開から半年、再生回数は3,000回を突破した。この曲、そしてこの映像が、僕らの第1歩になったことは間違いがなかった。

Southern City! ピラニア



 続けざまにリリースされた2ndミュージックビデオ「Southern City! ピラニア」。前作の反響を受け、そのまま製作へと乗り出した。  「Southen City! ピラニア」という珍奇なタイトルは、「サマーれげえ!被害者」という曲のリコンストラクション(再構築)バージョンであるところから来ている。「サマーれげえ!被害者」のトラックを解体し、アコースティックギター、アコースティックピアノのフレーズをジャジーに解釈してループさせた。そこにシンセサイザーの音やエレキギターのアドリブ演奏が入って、ジャジーでダビー、アコースティックでエレクトロなインストトラックが完成した。
 この映像を撮影する上でのテーマは「夜」と「無人」だった。この曲のサウンドはあくまで「冷たい」。まさにピラニアが暗い海の中を泳いでいるようなイメージにするために、まるで光が飛んでいるような映像や小雨のロケーションを選んで撮影した。動いている光のほとんどは、車や電車で、中には人が乗っている。そこには電気やガソリンなどの「パワー」が働いていて、それはどこからか生み出されている。映像内に一瞬だけ映る、火や、タンカーや、工場はその生産を表している。パワーはいったい何から生まれるのか。光は何を犠牲にして生み出されているのか。サザンシティー=南部の都市の、ピラニア。暗闇の中に浮かび上がる光の彩りとともに、その光を作り出している内的なパワーが映像のテーマになっている

インディーズバンド試聴サイトaudioleaf